大阪高等裁判所 昭和40年(行コ)13号 判決 1966年4月12日
大阪市生野区中川町三丁目二九番地
控訴人
山崎造機株式会社
右代表者清算人
伊藤光夫
右訴訟代理人弁護士
野村清美
同市同区猪飼野町八丁目七番地
被控訴人
生野税務署長
森岡市太郎
右指定代理人
叶和夫
同
戸上昌則
同
石黒俊一
同
泉茂
同
勝瑞茂喜
右当事者間の頭書事件につき当裁判所は次のとおり判決する。
主文
一、本件控訴を棄却する。
二、控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
控訴人は、「厚判決を取消す。被控訴人が昭和三一年九月一〇日控訴人の昭和三〇年三月一日から昭和三一年二月二九日までの事業年度法人税について所得金額を金九五万、八、九〇〇円、法人税額を金三六万六四〇円としてなした更正決定は無効であることを確認する。訴訟費用は第一・二審とも被控訴人の負担とする。
」 との判決を求め、被控訴人は、主文同旨の判決を求めた。
当事者双方の主張並びに証拠関係は、
控訴人において、
(一) 訴外有限会社山崎鉄工所が使用していた工場設備、機械器具中建物は、山崎林兵衛個人所有のもので控訴会社として貸すことができないものであり、昭和三〇年六月一四日開会の控訴会社の第七回債権者集会議事録中の右賃貸借契約についての報告は一応の債権者に対する挨拶にすぎず、事実に反するものである。又物件の価額は大阪国税局長の売却通知書(乙第七号証)によると僅かに金一七一万〇、一〇〇円であり、これに対して僅か一年間の賃料として金九二万九、〇五九円を支払う筈がない。会計知識なきため控訴会社において右金員を賃貸料としたとしても、その実質は所謂私財提供益或いは負担付贈与である。右金員の大部分が訴外会社から直接税務署に控訴会社の国税として支払われている事実によつても、少くとも負担付贈与であることが明らかである。
(二) 国税並びに税務署においては期限等は厳重に守られ法定の理由以外であれば、如何なる理由でも期限を経過したものは間違であつても、直されないというのが一般の慣例となつている。又還付請求についても、一年を越えるものについては還付を受けることを得ずと規定されているが、事実は昭和二六年度であるのを昭和二五年と書き誤つて還付請求をすれば、昭和二六年度の間違と判つて居ても、却下せられ、常識的には間違いと判断できてもそのように取扱つてくれない現状である。しかるに原審は右のような国税局、税務署の取扱を無視して一般の常識上の結論よりして本件更正決定通知書の事業年度の始期が誤記であると判断したのは公平を欠く。
と述べ、当審証人山崎一江の証言を後援したほかは、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。
理由
一、当裁判所は控訴人の本訴請求を棄却した原判決を正当と認める。その理由とするところは、次に附加訂正するほか、原判決理由説示と同一であるからこれを引用する。
(1) 原判決理由二、冒頭記載の事実認定の証拠に挙げられた原審証人藤本徳松同高野鉄雄の各証言はいずれもその一部を訂正し新たに成立に争いない乙第一ないし第三号証、原審証人高野鉄雄の証言によつて控訴会社並びに有限会社山崎鉄工所の経理を担当していた同人がその原本を作成したことが認められる乙第九号証、原審証人相楽寛治の証言を加える。そして右事実認定はこれに反する前記原審証人藤本徳松同高野鉄雄の各証言部分並びに当審証人山崎一江の証言をもつてしても左右することはできない。
(2) 控訴人は、有限会社山崎鉄工所が使用していた物件の価額は金一七一万〇、一〇〇円であり僅か一年間の賃料として金九二万九、〇五九円を支払う筈がないと主張するが、成立に争いない乙第四ないし第七号証によると、国税局が差押えた控訴会社所有の機械器具の一部の公売された価格が金一七一万〇一〇〇円であるに過ぎず、又前記乙第九号証によると右金九二万九、五九円には一年間の賃料のほかに、その前払いも含まれていることが窺われるので、当審における控訴人の(一)の主張は当を得ないものである。
(3) 原判決七枚目裏末行目から八枚目表一行目にかけての「その支払をしないときは公売処分を受けており」とあるを削る。
(4) 当審における控訴人の(二)の主張についても、国税局および税務署の取扱例如何は、本件更正決定の誤記についての裁判上の判断を左右するに足るものではないから、右主張も採用できない。
(5) 本件更正決定が、控訴人より賃貸料としての申告があつたことに基づいてなされたものである以上、この決定に取消の事由があるか否かは別問題とし、それ自体に重大且つ明白なかしがあるとは、到底いえないから、本訴請求はこの点より見ても失当と謂うほかはない。
二、よつて本件控訴を棄却し、民訴法第八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 沢井種雄 裁判官 村瀬泰三 裁判官 兼子徹夫)